豆本図書館見学記 [美術展レポート]
「図書室のある家」に住みたいというのが私の積年の夢です。
その夢を実現した人が、千葉県にいるらしい。
製本教室でご一緒したMさんが見学に行かれるとのこと
私も誘ってくださいました。
千葉県某所にその図書館『愛書館 清宵亭』はあります。
図書館とはいってもあくまで個人の蔵書
開館時間が決まっていたり、HPがあったりするものではありません。
今回は赤井都さんにご紹介をいただき
Mさんが直接館長さんにアポイントを取ってくれました。
自宅の庭(!)に造られた図書館の入口には立派な石碑
中に入れば広大な部屋の壁面がすべて天井までの造りつけ本棚!
この蔵書、量もさることながら、驚くべきはその質で
すべての本にカバーをかけ、タイトルを書き込み
独自の分類法で徹底的に整理してあります。
「誰かが動かすと、たとえ元の場所に戻してあっても分かります」
と、にこやかにおっしゃっていました。
私たちが豆本を造っていると事前にお伝えしたからでしょうか
凝った作りの稀覯本を次々と見せてくださいました
こちらは左右に開く珍しい箱。中央の金属板は箱を閉じても見えます。
立派な洋本ではよく見かける金小口ですがこれは模様入り!(ё_ё;)
白い表紙に金箔押しの題字と宝石が一つ埋め込まれた本
これを見た後、私も光りもののついた豆本が作りたくなって
ついつい浅草橋あたりでビーズを買いこんでしまいました(^^ゞ
コレクションの中でも特に見ごたえがあったのが武井刊本です。
武井刊本とは、童画家、版画家、童話作家の武井武雄さんが
1935年から制作した一連の書籍で、内容はもとより、印刷、
装幀、箱まで含めて一つの作品として作り上げられています。
書物の内容に合わせて実に多彩な素材が用いられていました
中にはパピルスを本文紙として用いるため、
パピルス草の栽培から始めたというものも(ё_ё;)
この武井刊本だけでも数日は楽しめそうだったのですが
さらに膨大な豆本のコレクションが!
中央の棚にあるミニチュアの家具類、これがすべて豆本用の本箱なのです!
豆本は小さいだけに装幀に思うさまこだわることができるため
本当に多彩な姿をしています。
これらは単に美しく見る人を驚かせるだけではなく、本の内容と密接に
かかわっていなければならないのだと下野さんはおっしゃいます。
たとえば一番最後の写真は野坂昭如『火垂るの墓』の豆本なのですが
冷たいホーローの骨壷のイメージが、幼子の死を暗示するというわけです。
こちらは凸版印刷が作った0.95㎜×0.95㎜の豆本『十二支』
世界最小の本としてギネスブックにも載ったそうです
私の写真が下手で分かりにくいですが、ケースの中の白い部分の中央
ぽちっとあるのが豆本で、それを見るためのルーペと拡大された本
がセットになっています。下野さんいわく「これは小さすぎるよね」(笑)
下野さんはとても多彩な方でなんとご自分でも本を造っていらっしゃる!
これは身近な素材で作ったきり絵の絵本。絵がとてもおしゃれでしょう。
ほかにも、お菓子の空き箱や信玄餅の袋(!)などを綺麗に加工した
さまざまな本を造られていて、とても紹介しきれません。
なんと個展を開かれたこともあるとか。びっくりです!
この訪問の前にたまたま読んでいたのが今井田勲さんの『私の稀覯本』
今井田さんは、『ミセス』『銀花』などの雑誌の編集を手がけた方で、
南方からの復員から始まるこの本自体とても面白く
捕虜収容所で人々を元気づけた雑誌の話などは
活字の持つ力を改めて考えさせられました。
が、なんと、この本の中に下野さんのお名前が!
それは下野さんの「ゑぞ・まめほん」収集にまつわるエピソード
大変な苦労のすえ全巻の収集を達成したと思いきや、
中の一巻がページの抜けた落丁本だった。
「誰を恨んでも恨み切れない気分になっていた。」
発行数の少ない豆本はなかなか入手できないようなのです
しばらくしてようやく、その落丁本のかわりを入手できたのだけれど
なんと、その二冊目には、一冊目で抜けていたページが
重複していたそうです(ё_ё;)!!
こちらがその「ゑぞ・まめほん」のなかの一冊です
残念ながら、これがその「双子の豆本」かどうかは
聞きそびれてしまいました(^^ゞ
時間のたつのが早い不思議な場所、不思議な体験でした。
下野さん、本当にありがとうございました。
<後日譚>
後日、お礼状と一緒に私の作った「ひらがなのささやき」全五巻を
お送りしたところ、丁寧にお返事をいただき、「愛蔵します」とのこと。
あの、宝石のような本たちの中に、ちまっと私の豆本もいるかと思うと
なんともウレシハズカシな気分です(^^ゞ
図書室のある家に住みたいってわかる気がします。
私は写真集だけの部屋が欲しいです(笑)「美女と野獣」のお話の中にも
ベルがそれを望んだシーンがありますが、夢ですね^^
今日の記事はまた濃いですね~~!どれに対してコメントしようか迷うくらい
あれもこれも(笑)パピルスの本、すごいですね。栽培から・・だなんて。
豆本コレクションもすごいし、とにかくさまざまなデザインが素晴らしいですね。
雉虎堂 さんの豆本もコレクション棚に仲間入り!すごい~~~。
by サチ (2010-02-16 11:18)
図書室のある家、あこがれます〜!!
本をたくさん置けるスペースが欲しい・・。
(ウチ、めちゃくちゃ狭いんですよね。。)
by ikuko (2010-02-16 13:19)
素晴らしいです。 の言葉では失礼ですね。
愛情がこもっていて奥の深さはどういい表わしていいのでしょうか?
by 空楽 (2010-02-16 13:54)
☆彡サチ様
宝くじがあったったら図書室ですが、
12分の1サイズになれるなら
サチさんのミニチュア朝食セットが食べたいです
あ、小さくなっても食べられないのか( ̄▽ ̄)
☆彡ikukoさま
いやいや、狭さだったらうちも負けてないです
主人の部屋が完全にデッドスペースというか
開かずの間になっているので、なおのことです(>_<)
☆彡空楽
本当、あの空間に入った瞬間、ちょっとめまいがしました
物にはどうも仲間を呼ぶ習性があるようで
本の集まるおうちには本が
猫の集まるおうちには猫が
どんどん増えて行くようですね(^^ゞ
by 雉虎堂 (2010-02-16 15:06)
凄い図書室ですね
季刊「銀花」は全巻に数冊欠けて持っていますが
こちらは立派な蔵書群ですねー
by SILENT (2010-02-16 16:26)
SILENTさま
私は今井田さんの本を読むまで
「銀花」という雑誌を知らなかったのですが
知ったその日に、まもなく休刊になることも知り
ああまたひとつ「間に合わなかった」と思いました(T_T)
by 雉虎堂 (2010-02-16 16:38)
ん~唸ってしまいます(^^
雉虎堂さんも今度は豆本用のクローゼットや桐タンスなど
たくさん用意しなくてはですね♪
by marimo (2010-02-16 17:11)
marimo様
今のおうちでは
猫社長の寝どこになっている
コレクションボックスが精一杯です(>_<)
by 雉虎堂 (2010-02-16 17:46)
部屋に図書館があるといいなぁ~
雉虎堂 では図書館の前に社長室が必要(;^_^A アセアセ・・・
by green_blue_sky (2010-02-16 18:54)
いつもの人様
うちの社員は豆本ばっかり作って
ちっとも社長を大切にしません
社長室、欲しいです
ぜひキャットタワーをつけてほしい(=^・^=)
by 猫社長
by 雉虎堂 (2010-02-16 19:06)
うーん、すごい!の一言です。
>「図書室のある家」に住みたいというのが私の積年の夢
いや~私もあこがれます!
あと、音楽室と美術室が欲しいとずっと思ってました。
by 藤丸 (2010-02-16 19:24)
藤丸様
置物を回すと壁の一部がごごごごって移動して
その奥に秘密の図書室が、というのが
究極の野望です(^m^)
by 雉虎堂 (2010-02-16 21:06)
ただの図書室じゃなく、自分の好きな本に囲まれるのはいいですね。
武井武雄さんは今でも人気ありますからねー。
豆本は、サイズも、材質もさまざまだから、
こんなに芸術的に保管されてるのはスゴイです。
by タッジーマッジー (2010-02-16 21:43)
タッジーマッジー様
そうなんですよ。
コレクターには高度な分類整理能力が
不可欠だと痛感いたしました(^^ゞ
by 雉虎堂 (2010-02-16 22:29)
すご〜〜いですね!究めていらっしゃる!
家の作りもしっかりしていないと危ないでしょうね。
…なんて余計な心配までしてしまいました ^^
by chako (2010-02-16 23:04)
いやぁ~~~ 何と言ったら良いのか分からない程
すごい人がいらっしゃるのですね。
雉虎堂さんのあの5冊のセットが仲間入りとは 素晴らしいですね。
宝くじが当たりますように・・・・・
by やよい (2010-02-16 23:07)
お久しぶりですー。
ちゃー子さんの件には、温かいコメントをありがとうございました^^
またボチボチ更新しますので、これからもどうぞよろしくお願いします。
by koume (2010-02-17 01:25)
☆彡chakoさま
つくりつけの本棚もすべて特注だそうです
天井も高くてとても気持ちのいい場所でした
でも出来れば図書館と製本用の工房も欲しいな~
☆彡やよいさま
宝くじにはずいぶん貯金しているので、そろそろかなっ(^◇^)
☆彡koumeさま
はなちゃん、こうめちゃんの様子も気になるし
また更新されたら遊びに行きますね!
by 雉虎堂 (2010-02-17 07:18)
あぁこりゃすごいですね~。
ウチも家建てた時に本を置くためだけのスペースを作りましたが、予算と使い勝手の関係で造りつけの本棚は諦めました。
スチール棚だと立派には見えないんですよね~。
ま、ウチは本よりマンガの方が圧倒的に多いので、図書館ではなくマンガ喫茶を目指しますw
by ayafk (2010-02-17 16:38)
☆彡ayafk様
とびっきりの美猫がいる猫カフェになりますね(*^_^*)
by 雉虎堂 (2010-02-17 16:49)
豆本の素敵な世界に、うっとりしました。ありがとうございます♪
さて、先日『暮しの手帖 44 早春 2010』で、豆本(ミニチュアブック)の記事を読んだばかりでしたので、とても身近に感じました。
by ねこ大臣 (2010-02-17 17:40)
☆彡ねこ大臣様
コメントありがとうございます!
うちは猫が社長で一番偉いのですが
さらに上を行く猫”大臣”とは(ё_ё;)
うーちゃんは本当に偉いんですね(*^_^*)
暮らしの手帳私も見ました!
次回のブログで取り上げますのでよかったらまた
遊びに来て下さい(^_^)ノシ
by 雉虎堂 (2010-02-17 20:28)
どれもとても手が込んでいますね。
こうして見ると、本当に本っていうのも芸術ですねー
by yuuri (2010-02-17 23:45)
yuuriさま
「小さな宝石」なんて言われるのも
むべなるかなという感じですが
私が作ってるのはというと
「小さな路傍の石」ってとこでしょうか(^^ゞ
by 雉虎堂 (2010-02-18 07:04)
分類・・・私とは無縁の素敵な言葉・・・
なにかを極めてる人って
仕事場がとても綺麗な印象があるのですが、
こちらの美しく分類整理された図書館にも
そうした印象をうけました。
豆本ってそのへんで目にする機会がほとんどないものだと思うのですけれど、
(本屋や図書館にある訳でなし)
これだけ一堂に集まっているとテンションあがるでしょうね。
私もものすごく拝見してみたくなりました。
↓ひらがなのささやき全5巻、と~~っても素敵です!
あの文字と一緒に絵がついてますが(虎とかももんがとか)
ああしたものはどこかで見つけていらっしゃるんですか??
(ネットのフリー素材とか)
それともご自分で描かれたりするのですか??
by ヤヨ (2010-02-18 17:05)
☆彡ヤヨさま
小さいのがいっぱい集まってると
なんであんなに可愛いんでしょうねえ(*^_^*)
拙作へのおほめの言葉、ありがとうございます
絵は基本wordのクリップアートですが
目や口があると表情が生まれてみる人の印象を限定するので
デジ絵ソフトに落として加工しています(^^ゞ
by 雉虎堂 (2010-02-18 17:56)
凄いなあ。武井武雄は私も好きで、ただし豆本ではないものを持っています。宝石本はプレス・ビブリオマーヌの佐々木桔梗さんの羊皮装丁の本にルビーが刺してある本をもっています。たしか、雑誌「新青年」の推理小説で鉄道をモチーフにしたものについてのエッセイだと思います。佐々木桔梗さんは無類の本好きで、大変なコレクターでしたが、先日、雉虎堂さんにお越しいただいた啓祐堂書店にも時々顔を出されていたんです。
by ナカムラ (2010-02-18 19:43)
☆彡ナカムラさま
私もいつか武井刊本のオーナーになりたいです。でも、全部集めるのではなくて、
あの140弱の本の中から、内容、装幀ともに、一番気に入ったものを一冊だけ。
そのためには、すべてをじっくり見ないといけないわけですよね。
気の長い話です(^^ゞ
by 雉虎堂 (2010-02-18 21:21)
雉虎堂さんも、やがて、お手製の豆本を収める本棚まで手作りされるようになるかしら♪
どんなミニチュア家具になるかな~。
by Inatimy (2010-02-19 08:12)
☆彡Inatimy様
困ったことにミニチュア家具も好きなんですよ~
掲載した今井田さんの本の表紙を飾っているのは
フランス製の豆本用本棚。素敵ですよねえ
親戚に弁護士と医者がいると便利だと誰かが行っていたけど
私は印刷所と指物師の親戚がほしい(^^ゞ
by 雉虎堂 (2010-02-19 09:43)
うわー、凄いですねぇ。
生で見たらもっともっと、とてもきれいなんだろうなぁ。
by さぼてん (2010-02-28 01:26)
さぼてん様
コメントありがとうございます
そうなんですよ、本当にきれいなんです
豆本はじかに見て、手に取ってこそ、です(*^_^*)
by 雉虎堂 (2010-02-28 12:14)