雉虎堂の文体練習 [雉虎堂豆本]
レーモン・クノー『文体練習』は、
何の変哲もない短い文章を、なんと99通りもの
文体で書き分けたという驚異の書物です。
私はこの手の文学アクロバットが大好きで、
こんなのや↓
百聞は一見に如かず、ちょっとやってみましょう
──基本の文──────────────────────────────────
ある日森の中、熊さんに出会った、花咲く森の道、熊さんに出会った
熊さんの言うことにゃ、お嬢さんお逃げなさい、スタコラサッサ
ところが後から熊さんがついてくる トコトコトコト
お嬢さんお待ちなさいちょっと落し物、白い貝殻の小さなイヤリング
あら熊さん、ありがとう。お礼に歌いましょう。ララララララララ──────────────────────────────────────────
落ち着いて読むとこの歌詞自体が突っ込みどころ満載ですが
それはそれとして、この文章をアレンジしてみましょう
──報道────────────────────────────────────
今日午後3時ごろ、東京都八王子市で、通学途中の女児が
不審な男に追い回されるという事件が起こりました。
男は地域住民の通報を受けてかけつけた警察官により
その場で取り押さえられました。
女子児童に怪我はありませんでした。
警察の調べに対し、男は「熊さん」と名乗り、
「貝殻のイヤリングを返したお礼に歌を歌ってほしかった」などと、
わけのわからない供述を繰り返しているとのことです。
─────────────────────────────────────────
最近この「わけのわからない供述」って言い回しは、
あまりきかなくなりましたね
──ハーレ○イン×マンス──────────────────────────
どうして出会ってしまったのか、何度もそう思った。
「また僕から逃げ出す?いいよ、何度でも追いかけるから」
いたずらっぽく笑う彼の手の中には、
あの日なくしたはずの小さな貝殻のイヤリングが光っていた。
涙がこぼれそうになるのをこらえ、微笑んで受け取る。
「ありがとう」言い終わる前に抱きしめられた。
胸の鼓動が、終わらない愛の歌を歌い始めた。
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心不全の疑いがあるエンディングになりました。こんなの書いてますが
私はあれを詠み切ったことがありません(^^ゞ
──レシピ(4人分)──────────────────────────────
熊……一頭
お嬢さん……一人
貝殻のイヤリング……適量
歌……お好みで
①熊は軽く下ゆでし、お嬢さんと一緒にあえておきます
②お嬢さんが逃げ出したら、貝殻のイヤリングを適量くわえてください
③仕上げにお好みで歌を少々添えたら出来上がりです。──────────────────────────────────────────
意外と、専門用語が多くて困ります。下ゆでってなに?
下の方だけゆでるの?
──エヴァンゲリオ■──────────────────────────────
KUMAシステム、パターン青、熊です!
お嬢さん初号機、起動します!A.T.フィールド全開!
……逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ!!──────────────────────────────────────────
わはははははは、ごめんなさい。゚(゚^ヮ^゚)゜。
──蓮實重■(文学者 映画評論家)─────────────────────
それがいったい何を意味するのかわからぬままに、今我々の
目の前には一頭の熊がたちあらわれている。待て/逃げろという
児戯にも等しい二項対立に加えて、森だの、白い貝殻のイヤリング
だのといった、通俗的なイメージばかりを喚起する事物が
配されているにもかかわらず、それは何ら具体的な意味の領域には
着地せず、われわれの解釈はたえず脱臼しつづけるしかない。─────────────────────────────────────────
・:*:・(*´∀`*)・:*:・懐かし~。学生時代、この方のエッセイが
大好きだったんです。ほら、そういうお年頃ってあるでしょ(^m^)
いかがでしたでしょうか。
私は、それっぽい単語とか、文字の色とかでごまかしちゃってますが
クノーさんも、エーコ先生も、「文体」自体をきちっとかき分けてて
すごいなあと思います。
興味をもたれた方はぜひ、上記の書籍をお手にとって見ることを
おススメいたしますが、10月にいよいよ発売されます
『本の手帳9号 雉虎堂特集号』特別版付録豆本『猫藝春秋』
でも、雉虎堂の文体練習がお楽しみいただけます。
詳細はこちらをご覧ください。すみません、宣伝でした(^^ゞ
<祝:「みちびき」打ち上げ成功>
準天頂衛星システム(QZSS)「みちびき」
打ち上げ成功おめでとうございます。
生中継で応援していました。
ちょっと前からツイッターでフォローしていたので
なんだか、親戚のお子さんが旅立っていったような気分です
藤丸さん、イカロス君とみちびきさんのこと、
教えてくれてありがとうございました。
パターン青、熊です!
に爆笑でした(笑)
by maki (2010-09-12 17:16)
ぶはははは(>_<)
相変わらず雉虎堂さん、スバラシイ!
こういうのって、文体のクセとか雰囲気をよく理解してないと、
できないもんですよね。
古書会館は以前いた部署でお世話になってました。
平日だったら行けたのになぁ。行きたかったなぁ。
by タッジーマッジー (2010-09-12 17:39)
ぎゃはは~( ̄▽ ̄)ノ
本当に・・・百聞は一見にしかずですね
面白いですわ~。
こんな調子で、特徴的な文体に置き換えて行くと
限りなく笑えますね(^^
歌う人によってまるで違う曲に聴こえるカバー曲みたいです♪
本家を超越している場合も多々あると思われます。
by marimo (2010-09-12 19:29)
クマさんの夢を見そう(;^_^A アセアセ・・・
19日にいつもの場所でチェンバロ、楽しみです~
by green_blue_sky (2010-09-12 19:42)
大笑いしちゃいました(笑)
文体変えるとまったく違っていって楽しいですね。
頭が良くなくちゃ出来なそうw
10/11なのですね。ちょうど来客がある日だ(TT)
by リュカ (2010-09-12 20:35)
面白い試みですね。
絵画でも、だれだれ風という風に描き分けることのできる贋作作家がいますが、それも一つの大した才能だと思います。
by アヨアン・イゴカー (2010-09-13 03:20)
いや~面白かったっす!
ほぼ日刊イトイ新聞の「オトナ語の謎」というのに、
オトナ語文体に変えるものがありましたが、
これがベースになっているのやも……。
99の文体、読んでみたいです~。
とびたつみちびきさん、ご覧になったのですね。
私は謡の発表会でみられなかったので、
本当にうらやましいです……。
by 藤丸 (2010-09-13 07:10)
面白いですね〜!無料でいっぱい考えて遊べますね。
倉橋由美子のパルタイ風にしてあそんでみました。
猫芸春秋、完成おめでとうございます!
4冊組にもこころ惹かれます…
by chako (2010-09-13 09:15)
文体練習!
自分も読んだことあります♪
ホントにびっくりした記憶があります^^;
by お茶屋 (2010-09-13 12:27)
笑いながら 楽しく読みました。
「本の手帳 9号」 が待ち遠しいです。
by やよい (2010-09-13 13:19)
文体練習!初めて知りました!
面白い〜〜〜^^
by ikuko (2010-09-13 13:31)
文体練習って、初めて知った。
しっかし、これはこれは、訳の分からぬ本とはこのことか?
by おっきー (2010-09-13 21:50)
☆makiさま
あ、分かっていただけて
とてもうれしいです(^◇^)
☆タッジーマッジーさま
古書会館、私は初めてなんです
今回は出品せずお手伝いだけなので
ゆるりと見ることができそうです
(*^_^*)
☆marimoさま
好きな作家のほうが
量を読んでるし、深く詠みこんでるしで
文体模写も上手くなります
ってことで、これも愛の一種なのです(^^ゞ
☆green_blue_skyさま
チェンバロ運んでくるのも
一苦労だと思うのですよ(^^ゞ
贅沢な企画ですね♪
☆リュカさま
いやあ、滅相もないです
頭、かる~くぶっ壊れてます(^^ゞ
☆アヨアン・イゴカーさま
ゴーストライター求むという
求人があったら
真剣に天職を考えてみます(^^ゞ
by 雉虎堂 (2010-09-13 22:07)
☆藤丸様
「大人語の謎」私も大好きです!(^^)!
みちびきさん、順調に
宇宙で八の字軌道に近づきつつ
あるようですね(*^_^*)
頑張れ~♪
☆彡chakoさま
本の手帳特別版では他に
「J‐POP風」
「法律条文風」
「王朝文学風」などを
取り扱っております(^^ゞ
☆お茶屋さま
高橋源一郎さんも
似たようなことを
していたように記憶しています
誰もが一度はやって見ようと
思うことのようです(^^ゞ
☆やよいさま
栞先生のところで
ご予約受付中です(^^ゞ
☆ikukoさま
小学生の作文文体ってのも
ありますよ。
文末が全部「~と思いました」
になってます(^^ゞ
☆おっきーさま
法律条文風は
会心の出来なんですよ(*^_^*)
by 雉虎堂 (2010-09-13 22:13)
とても興味深く読ませていただきやした。
こういう文体練習をいっぱいして 精進したいと思いやした。
by ぼんぼちぼちぼち (2010-09-14 12:18)
すっごい本ですね、面白そう~。
異国の地の言語で、こういった文体の違いを感じられるまでに
なってみたいもんだなぁ・・・あぁ遠い夢。
by Inatimy (2010-09-14 19:30)
ぎゃはは(>▽<)大笑いしちゃいました!
さすがですね~~~~!!!
by サチ (2010-09-15 16:57)
☆彡ぼんぼちぼちぼちさま
あ、ぜひぜひやってみてください
読んでみたいです!
(^-^)
☆彡Inatimyさま
フランス語、学生時代
一生懸命学んだので「ゴキブリがいます」
「トイレはどこですか」はちゃんと言えます( ̄▽ ̄)ノ_彡☆
☆彡サチさま
何よりです~
引かれたらどうしようと心配してました(^^ゞ
by 雉虎堂 (2010-09-15 18:36)
うはははは、笑いました。文体練習って凄い(笑)
森の熊さんの歌、最後は手を取って踊るんだもんね、変な話だよね(笑)
by さぼてん (2010-09-16 12:39)
うわぁ~~~文体練習初めて知りました!読み書きが楽しくなりそうです。
それよりも雉虎堂さんのアクロバットはウルトラD級です☆
猫藝春秋いよいよ発売ですね!おめでとうございます^^
これを買って精進すべしですね♪
by montblanc (2010-09-17 23:14)
あははは・・・。大笑いです! すごい文体模写。
一芸に秀でた人は、二芸も三芸も持ち合わせちゃうんですね。
「天は二物を与えず」というのに、これじゃ不公平だなあ。
by sig (2010-09-17 23:56)
☆さぼてんさま
ありがとうございます!!
10月は谷中工芸展と
豆本カーニバルがありますねっ
楽しみ楽しみ(*^_^*)
☆montblancさま
山岳小説独特の文体なんてのもあったら
ぜひ、やってみたいです(^◇^)
☆sigさま
いやいや、そんなめっそうもない
こんなことに時間を費やしているから
世のため人のためになることが
何一つ出来ません(^^ゞ
by 雉虎堂 (2010-09-19 11:50)